半月ほど前の話しです。会社で人員不足の問題もある程度片付いて、一日の行動パターンが決まって来ました。
私の会社は物流倉庫で、数多くのアイテムを保管しています。私の仕事は、その数多いアイテムを、年度末までに全て棚卸しすることです。同じ派遣会社から派遣された13人のチームで行います。仕事は11:00から20:00で実働7時間45分。しかし、15:00までは入出荷で物が動くため、棚卸しはできません。そこで、11:00から14:00までの3時間を別部署の業務支援、1時間休憩を挟んで15:00から棚卸し、という感じで進めて行きます。
8月の上旬、はじめの3時間、誰がどの部署の業務支援をするかという発表がありました。そのとき、一部の人は随分混乱したようです。
支援する部署は全部で4つありました。
入荷の部署は、重いものが多くかなり体力を使います。
棚整備は、ぼろぼろになった箱とかを新しい物に交換したりする仕事なんで、責任も少なければ体力もいりません。
袋詰めは、小さくて大量にあるネジ類を、50個づつ袋に詰めて行く仕事です。数を間違えてはいけないので多少集中力はいりますが、体力はいりません。
品質管理は、知力が必要になり責任も非常に重いですが、半分は事務仕事なので座って出来る仕事です。
会社は、能力や信頼度で、メンバーを割り振ったようです。
私以外の男子は全員、力仕事になる入荷のほうへまわされました。そして、信頼のおける女子2名も、入荷のほうへまわされたようです。私は、品質管理のほうです。
私は他のスタッフの思考の傾向や意欲の度合いなどを洞察していたし、会社がどういう考え方でこういう結論に至ったのかもすぐに洞察できてしまったのでなんの疑問も持たなかったのですが、一部ではこの発表があった直後から、なぜ男子の私が座って出来る仕事をして女子が力仕事をするんだ、という不満の声が上がっていました。そして最後に出てくる言葉は決まって、
「これだけ仕事のしんどさに差があるのに、貰う給与は同じって不公平だ」
というものです。
「???」な感じになってしまうのは、私だけなのでしょうか。
いえ、確かに、目先の利益だけで計算すると、不公平なのでしょう。しかし、私は2年3年という長いスパンで考えて行くと、誰が得で誰が損でといった類いの問題ではないと思うんです。
そもそも、私が入荷という力仕事を免れて品質管理のほうへまわされたのも、必然的な話しでした。言ってみれは、これは給与という金銭以外の報酬だったのです。
この発表がでる1ヶ月前、私はタイムリミット付のきついライン作業のほうへ、1ヶ月応援で行くことを会社から命じられました。上流側からベテランスタッフが容赦ないスピードで出荷品を流してきます。そのスピードに遅れないように私は最下流で仕分けをします。ふと目を上げると2人で楽しそうに笑いながら通路をゆったり歩いて行く同僚の姿が見えました。それを見た時は、さすがに「なんで自分だけが?」という気持ちになりました。しかし、そこから1ヶ月、私はとにかく自分に与えられた仕事をただただ誠実にこなしていきました。
もともとギフテッドの私は、はじめの5分で、6パターンある全てのパターンについて、仕分け用の約40個のカゴのどこが何番なのかを完璧に暗記してしまい、はじめの1時間で仕事の流れを完全に理解してしまい、はじめの半日で70人いるスタッフの全員の顔と名前を覚えてしまい、2日目にはほぼベテランと同速で仕事をこなすようになりました。手があいたり手が足りなくなったりしたときには、ベストな方法を導き出し、適切な人に提案し確認していました。後から知ったのですが、その学習の早さと仕事の質は、すぐに管理社員の耳に届き、高く評価されていたようです。
確かに、目先の利益だけで考えれば、これだけしんどさの差があって給与が同じというのは不公平なのかもしれませんが、本来はそういう物じゃない。与えられた仕事を誠実にこなすことによって、次に繋がって行くし、より高いステップへと上って行くことができる。身分も、給与も、次第に人と差がついて来る。誰が得で誰が損でとかではなくて、自分がどれだけやってどれだけもらえるようになるかという問題。
でも、最近の派遣スタッフを見ていると、そういう2年3年という長いスパンで計算するということが苦手な人が多いなって、そう感じます。